Installation view
photo by Hideto Nagatsuka
個展 ー不確かな存在の記録ー
2014年9月29日ー10月11日
いりや画廊
私が現在も続けているこの行為のきっかけは、学生の頃の事故での体験がもとになっています。その時強く抱いた自己の存在の不確かさから、毎日の自分を日記のようにドローイングとして紙に定着する行為を始めました。その後、自分とその場所との関わりの記録としてフロッタージュという写し取りの描画技法を利用して、その場所固有の色やかたちとそっくりに仕上げるといった、現在の制作方法に至ります。
自分が対象物に触れて写してくるその場所というのは、日常さして気にも留めない壁や道路や看板などの類い。物がずっとその場所にあり続けることで変色したり、錆びたり、また人が使い続けるなかで徐々に現れてくる手垢や手沢のように、素材が時間や周囲の環境によって様態が変化していく。そのありようが、ものが存在すること自体であり、ものに染み付いている記憶であると考えます。
自己の存在を確認するかのように始まったこの行為を続けているうちに、かけがえのないその土地と人の営みの記憶を記録することが、自分の営みとなりました。ずっとそこにあって、誰にも気づかれずに存在しているものの声に耳をすませて、色鉛筆を携え記憶を拾い集めます。